“はじめて”の1年間。

何だかんだで、1年の月日が経ちました。過ぎてみれば驚くほど短く、しかし彼女に近づくには果てしなく長い1年でした。

最初のうちは、「自分なりの付き合い方ができればそれでいいや」なんて軽く考えていましたが、そんなわけにはいきませんでした。女としての彼女のことを知れば知るほどに、そして近づけば近づくほどに、その魅力にどうしても惹かれてしまいました。これ以上は…と思っていても、日を重ねるごとに会いたい気持ちは強くなっていく一方でした。

こんなに誰かを好きになったのは初めてだったし、きっと最初で最後なんだと思いますけど、それ故にまともな恋愛なんて今まで一切したことがなく、本当にしどろもどろでした。元日朝チュン車中泊の時なんか彼女が傍に寄り添っただけで融けてしまいそうなほど心臓が鳴り響いていました。それはきっと向こうにも十分伝わっていたことだと思います。

彼女を彼女として本当に真剣に考えられるようになったのは、多分初夏に入ったくらいの頃からでしょう。もちろんそれまでも、告白するまでも自分としては彼女のことをちゃんと考えていました。ただひたすらに彼女のことが大好きで、二人になった将来のことなんて頭にも浮かびませんでしたが、そういうことを考えると、心の奥底では彼女なんて高嶺の花過ぎて手に入るわけがない、でも好き、みたいな、最大公約数的な浅慮にしか至っていなかったのかもしれないです。

彼女といる時は、まるで現実じゃないような感覚があったんです。こんなの嘘偽りだって疑ってたわけでは決してないのですが、片恋していた時期があまりにも長すぎて、手を繋いでくれるのが、夢みたいで。

だからなのかは分かりません。本当の自分、自分らしい自分、みたいなのが、彼女の前では出せなかったんです。自分を隠したかったわけじゃないのに。後ろめたさなんて何もないのに。毎回のように後悔してるんですよね、別れたあと、家に帰ってから。どうしてもっと素直になれないんだろう、って。

そんな私に気付いていたのかもしれません。彼女の方も、気を遣ってくれていたんだとは思います。俺が喜ぶこと、嬉しいと思うこと、そういうのを折々に合わせて探っていたりも、していた…はずです。でもそんな気遣いはいらなかったんです。おせっかいじゃないです、気を遣ってくれること自体は凄く嬉しいんです。だってそれだけ俺のことを想ってくれてるってことだから。でしょ。だけどそういうことをいつまでも続けてたら、結局彼女との関係に未来はないのかなっていう不安がどうしても脳裏をよぎってしまうんですよね。

俺はアイツの本当の気持ちが知りたくて、同じようにアイツも俺の本当の気持ちが知りたかった。俺は自分のことなんかとうに分かってるつもりだったんです。だけどそれを、付き合ってから今一度ちゃんと伝える、そういうチャンスを逸してしまったんです。それがこの1年の後悔の一つですね。

会えばすぐに分かるんです。俺がアイツを求めたいし、アイツも俺を求めてくれるから。なのに会っていないとき、他人にちやほやされている、されに行っているのを見てしまうと、その夢の時間が本当に「夢」になってしまうような気がしました。分かってるし、信じたいけど、自分のどこかにはどうしようもなくやりきれない「何か」が溜まってしまう。

そんな無限回繰り返しジレンマにやっとやっと慣れたのが初夏辺りなんじゃないだろうかということです。正直、今でも完全に克服できたとは言えない。こんなところで取り立てているうちはそのやり切れない感情が無視できず、ただ囚われていることを意味するに過ぎないからです。

本人にも何度か言ったとことだと思います。甘い言葉ばかり使っていると、彼女にとっての自分がもっと弱くなり、それが今後の枷になってしまうので、時にはキツい口調を放つこともありました。別に計画というほどではありません。九割九分九厘本能みたいなものです。でもそうすると泣き出しちゃうんですよね。本当に泣いているのかは分からないけど、泣かれたらそれ以上キツく言ってもしょうがないんです。俺は何も言えない。だから結局なあなあで終わってしまうんです。

俺は、嘘の自分を作って、それを貫き通そうとしました。

でもそうしているうちに、ほんとうの自分が分からなくなってきました。

たまに自問するんです。俺って昔からこんな人間だったっけ、って。目に見えるところから削られていって、多分今は心にある芯のようなものも、徐々に割かれつつある気がします。気がするだけです。トーチがなくなるわけじゃないですから。

ただこれだけは言えます。俺はアイツが好きなんだって。どうしようもなく好きだって。自分が見当たらなくなって、やりたいことも見失って、それでもなお有り余るほどの幸せが、あのかけがえのない時間にはあるんだなって。

だから気付いたんです。その幸せを糧にして、あと1年頑張ろうって。大学生活がこんなにも重く辛くのしかかるものだとは思っていませんでしたし、実際2年の最後までは筋書き通りの人生でした。筋書きをひっくり返したのは自分です。それでこれほどの幸せを得られたんだから、それなりのツケがあるのは当然なんです。でもね、神は乗り越えられない試練は与えないって言うじゃないですか。乗り越えようって思ったんです。乗り越えて、この先の未来を作ろうって。辛いことの先には必ず良いことが待っていると、親父の通夜で誰かに言われました。

信じますよ。

信じて突き進むしかないでしょう。

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