プレミアム付き商品券の経済的効果。
新潟市では5月から「プレミアム付き商品券」というものが発売され、(小売泣かせと)話題を呼んでいます。
どんなものかと言いますと、8月末まで市内の提携店舗で使える1,000円分の商品券 “11” 枚を1万円で購入できる、というものです。つまり1万円の現金流動性と引き換えに10%のプレミアムを得られるんですね。
消費者側の(ミクロレベルの)理論でいけば、そりゃ1,000円が実質タダで手に入れられるのだから、「市内の提携店舗」での購入が消費額のある程度を占めているのだとしたらこんなに嬉しい話はありませんよね。
企業側の話。
そもそもまずドロワーに入った商品券の類がいかようにして経理上処理されるのか私は知らなかったのでバイト先の店長に聞いてみました。ここでは図書カードが例に挙げられましたが、カードで支払われた分の売上は日本図書普及という所から現金として入ってくるのだそうです。店長は財団法人と言っていましたが、調べたところ現在は株式会社になっています。
つまり今回のプレミアム付き商品券で言うならば、これで支払われた分の売上は、やはり新潟市から補填されることになるのでしょう。あくまで根拠のない憶測でしかありませんが経済的に考えると合理的な解がこれしか浮かび上がりません。
とりあえず企業は市からお金をもらうので、これはこれで何の問題もありません。
では他に何のメリットがあるのか。
まず安直な考えではプレミアムの存在です。消費者が最初に支払った現金以上の額が市場には出回ることになります。
そしてそのお金が貯蓄に回ることは絶対にあり得ません。商品券ということと、期間が制限されているということです。だから引き換えた1万円+10%分のお金は、8月末までに必ず遣われるのです。9月1日になった途端その商品券が紙切れになるのだから、全ての保有者にとって何も買うものがなく買った額以上の効用をもたらさない物品と等価交換したとしても、商品券を使うということがただ唯一の純粋戦略ナッシュ均衡になっているのです。
だから、商品券加盟店としてはその商品券の存在によって、商品券が存在しなかった場合の世界線よりも中期的な売上が伸ばせるという期待が持たれます。そして恐らくその期待は実現されます。
ただこのシステムには大きな落とし穴があります。
それは、「プレミアム分は誰が払っているのか」ということです。
まずどこか得体の知れない一般企業が作っていて、その企業が行っている他の事業によって得られた資産で経済を回しているという予想。あり得ませんね。プレミアム付き商品券の仕組み上、これを配布しているだけでは投資にはなり得ません。だからただ市場に金をバラ撒いているだけになります。利益を求める全ての人がこれをやったところで、不利益となるのです。
これは新潟市がやっていることです(正確には市内の商店連合会などが中心になって行っているようですが、その経費の殆どを国や市が担っているのだから地方でやっているのと同義です)。市は地方公共団体です。地方公共団体の資金は全て税金で賄われています。つまり消費者の負担です。もし公債で代替していたとしても同じです。公債は将来世代の課税を意味します。やはり消費者の潜在的な負担になるのです。
新潟市は「プレミアム付き商品券の販売」という事業によって単価1万の売上を得ますが、商品券が償還されれば単価1万1,000円の限界費用が発生します。利潤は0どころかマイナスになるのです。
そのマイナスをどこから賄っているか。これもまた税金です。その税金は我々最終消費者が支払っています。
どうですか、これ。
短期的に考えれば経済は活性化するので増税後の売上維持には向いているかも知れません。
ただ使っている人が気付いていないだけで、この見返りは必ず税の取り立てとなってやってくるのです。そんな顕在的なものではないかも知れないけど、それがカネを考える上でのトラップなんですよ。
まぁこんなところでディスって「経済効果ゼロ」と断定して関係各所からブーイングを喰らってもしょうがないので結論は濁しますが、プレミアム商品券を使う方々はどうか自分達が「使われている」ということには自覚的になって下さい。