企業がエントリーシートの受付を開始したら、いよいよ長いながい戦いの始まりです。企業によっては説明会に参加しないとESすら受け取れないところもありますが、ごく例外的です。私は1社だけありました。

堅実な文章力と個性的な文章力

文系、特に高校や大学で創作系の部活、サークルに所属していた方がぶつかる悩みかと思います。また自分で書かなくても、本を読むのが好きな人、その他発想が常軌を逸している人ももしかしたら同じ悩みを持つかもしれません。こういった方々は「 特に面白味はないが、万人受けする書き方」と「 ふざけていると一蹴されるリスクがあるが、読み手によっては好印象を与える書き方」の両方ができます。人事が読みたいESは、果たしてどちらなのでしょうか。

結論から言うと、 どっちもどっちです(笑) その企業に対して本気度を示すならば真面目に書いた方が無難といえば無難なのでしょうが、有名企業の人事は1日に何十、何百という数のESに目を通すわけです。そう考えると、ただ平々凡々なことを書いていたのでは結局自分という人間を深く印象付けることができません。無論あまりにふざけたような書き方では逆に悪い印象を与えてしまうでしょうが、ある程度 ユーモアのある書き方、テンポの良い文章であればポジティブに考えてもいいでしょう。

文章のテンポって?

少しテクニカルな話になります。日本語は、句読点の使い方で読みやすさがガラリと変わる不思議な言語です(英語だとそうでもない? 英語で論文を書く時はコンマの使い方に色々と制約があるらしい)。

例えば以下の一文を読んでみてください。

【A】 サンタクロースをいつまで信じていたか、なんてことは、たわいもない世間話にもならないくらいの、どうでもいいような話だが、それでも、俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うと、これは確信を持って言えるが、最初から信じてなどいなかった。

いかがでしょう。続けて次の【B】も、同じ文ですが【A】と比較してどういう印象を受けるでしょうか。

【B】 サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが、それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった。

谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱」角川スニーカー文庫(2003年)

多分、多くの方が、【A】は比較的丁寧に休みやすみ、【B】の方を一息でスッと読んでいたのではないかと思います。

これ、実は【B】が原文なんです。確かにこの例は極端で、何故かというとこの筆者がもともと読点をほとんど使わない方なので、それに比較のために私が無理やり読点を付けたのが【A】の文だからです。

私たちは声に出さない黙読であったとしても心の中では必ずその文章を辿り、読んでいます。そして読点があればそこで一種の「息継ぎ」のようなこともします。言ってみれば句読点は五線譜の上にある「v」の字のような存在でもあるんです。

必要に応じて句読点を用いるのは大事なことではあります。しかしあまりに多様し過ぎると、読み手からは「くどい」という印象を抱かれてしまいます。 どこで息継ぎをさせるかは書き手に委ねられているわけです。

どこに句点を置いて、どこに読点を置くか。国語の授業ならどこでもいいなんて許されませんが、これはエントリーシートの話です。 人事が読んで面白いと思ったらそれでいい。正解はありません。自分の書いた文章を後からサッと読んでみて、ちょっとテンポが悪いなと思ったら読点を幾つか外してみる、というのは一つのノウハウです。

業界別エントリーシート

どういった業界でどのようなESを書かされるのかといったことは、正直情報量の多い市販の就活本の方が役立ちます。ここでは私が実際に提出したESから幾つか抜粋してご紹介する程度に留めておきたいと思います。

証券会社D

  • 取得言語と、その言語レベルを教えて下さい。
  • 学生生活(これまで)で最も力を入れた事、もしくは入れている事と、その理由をご記入下さい。(学業以外の事でも構いません)
  • 当社及び選択したコース・部門を志望する理由、入社後のキャリアプランをご記入下さい。
  • 証券営業という仕事の醍醐味、やりがいや難しさをどのようにお考えですか?ご記入下さい。

都市銀行M

  • 学生生活の中で力を入れて取り組んだ内容を3つ、それぞれ20字以内で記載してください。
  • (1)の3つのうち、一番「あなたらしい」と思うエピソードを一つ選び、行動事実を具体的に詳しく記載してください。(あなたが、いつ、どこで、何を、どうしたのか。その結果、何が変わったのか等)学生生活の中で力を入れて取り組んだ内容を3つ、それぞれ20字以内で記載してください。
  • 総合職、総合職(特定)、アソシエイト職の3つのコースのうち、なぜ「総合職」にエントリーしたのか、また、なぜ「グローバルCIB」を選んだのか、理由を詳しく記載してください。(併願を希望される方は、併願コースについて記載していただいても構いません。)
  • 当行の志望度合を選択してください。
  • 当行以外の志望先を入力してください。

IT企業S

  • 学生時代に力を入れたことは何ですか。そのテーマを記入して下さい。(3つ)
  • 取り組んだ背景や動機、設定した目標、実際に出した成果を、明確かつ簡潔に記入して下さい。
  • 上記の成果を出すにあたり、主体的に行動したこと(課題解決に向けた工夫・苦労など)、周囲との関わり方(チームでの役割・チーム内での貢献など)、学んだことについて記入して下さい。
  • あなたの長所・短所や特技などについて自由に記入して下さい。
  • 志望動機を記入して下さい。

IT企業N

  • 今までにあなたが変えた世界を教えてください。
  • 当社に入社後、あなたが変えたい世界を教えてください。
  • 【事前ワーク】「2020年に向けての課題」を考えてください。

建設会社H

  • 弊社を志望された理由を、あなたの企業選択のポイントとともにお聞かせください。
  • 学業面で、あなたが学生時代に最も力を入れて学んだ、又は学んでいる内容を具体的にお聞かせください。また、そこから得た成果などをお聞かせください。
  • 学業面以外で、あなたが学生時代或るいは卒業後に最も力を注いだ活動・取り組みについて、お聞かせください。
  • 自由記入欄

添え状は必要か?

グループLINEで話題に上がるまでまったくと言っていいほど私が気にも留めていなかったのが、この添え状。ESや履歴書など選考書類を企業に送付する際に誠意を込めるという意味合いで添付するものです。

わざわざ「添え状を添付しろ」と指定してくる企業もそうないとは思いますし、ビジネス上の礼儀とはいえこちとら一端の学生で十分なマナーが身に付いていないというのは人事の方も分かって下さるでしょう。ですから「入れ忘れた」といってそう悲観するものでもありません。

業界にもよるのでしょうけれどITでは採用ページに「添え状は不要です」と記載してあるところも多かったので、その辺はケースバイケースでしょうか。ただ、念のため、程度に心に留め、入れておくに越したことはないという意識を持っておきましょう。

テンプレは割愛しますが、せっかくのWebコンテンツですから私が使っていたファイルをここに掲載しておきます。社名、季語など変えて適宜ご利用下さい。